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風水と家相の歴史と構成

冬の赤城山

こんにちは。

時々、建築雑学についても綴ろうと思います。興味のある方に読んでいただけると嬉しいです。

今回は、住宅建築の時に時々出てくる風水家相の話です。

中国から伝わってきた風水。風水を受けて日本で新たに生まれた家相。歴史の中で風水と家相が行ったり来たり。とても変化しているんです。

1.風水とは

風水とは、古代中国で誕生した思想のことで、「地理」「堪興(かんよ)」「相地(そうち)」ともいうそうです。そもそもは、「地理」なんですね。


では、日本における風水とは何かというと、中国の風水は古代日本において受容され、陰陽師が掌握する秘伝的知識とされていたそうです。
戦国時代に古代からの宮廷陰陽師道が崩壊し散逸。近世には土御門家により再編成されたものの、平安以来の宮廷陰陽師とは断絶したものでした。

18世紀末、寺子屋により識字率が向上した日本に、鎖国中、長崎より書物を通じて風水が再伝来し、流行します。この時に易経等と混同し、「家相」として広まったそうです。

陰陽道からの流れで行くと、日本の伝わり方に納得いきます。

そもそもは、「易」なんですね。

中国の風水と日本の風水

「気」の概念のある中国は、風水を「気」をもとに、「天」への信仰を基本とした、広義では環境論、狭義では土地占いの結果、良い地相の土地にバランスよく「陽宅(住宅及び仕事の場所)」と「陰宅(先祖のお墓)」を建設する。と、いう思想です。

一方、「気」の概念のない日本では、四神相応論に代表される「大地」に対する信仰を礎とし、陽宅風水が近世末期に家相と言う形で普及したのが日本の風水のようです。

風水と家相は、完全に混同してるわけですね。

風水の建築的役割

この家相風水の歴史を調べれば調べるほど、中国と日本の文化の違い、リテラシー、宗教、呪術、信仰、哲学観等が混乱してくるので、この辺で歴史は止めます。
 以下、風水の建築的な役割と、構成、技法について書きます。

空間と意識との関わり

人の意識は、空間の影響を顕著に受けます。生活環境や建物の内部構造、置かれているモノという範囲だけに止まらず、自宅を取り囲む街の構造やその発展のあり方、自然など環境の影響を大きく受けると、地理風水で指摘されています。

巒頭(らんとう)と理気(りき)

風水を構成するのは巒頭(らんとう)と理気(りき)。この2つを切り分けて考えるととても分かりやすいです。

巒頭(らんとう)

巒頭とは、地理風水の意。土地とその土地の周辺環境を判断することは外家巒頭(がいからんとう)、内観は内家巒頭(ないからんとう)と分けられています。建築的な、ハード部分。

理気(りき)

理気とは、「方位」のこと。ソフトの部分です。

風水技法

巒頭と理気それぞれについて風水技法がたくさんあります。

以下、伝統風水師 山道帰一氏の著書「風水住宅図鑑」より

一・巒頭派
地理風水、陰宅、陽宅(外家巒頭・内家巒頭)

二・理気派(羅經派)
吉凶判断法、趨吉避凶法(すうきちひきょうほう)
①三合派 色々 
②三元派 色々
③その他の派 色々…

この理気というのが、日本特有の占いである気学や家相学と混同し、宗教が混在していることで、日本特有の現象として、風水住宅の建築に誤解や過剰な期待のギャップを生むことが多いとのことです。

風水の情報量は膨大で、理気だけで解釈されている風水がとっても多いです。実際風水診断の代表的な八卦方位で区切られた間取りの読み解きは、「当たるも八卦当たらぬも八卦」では済まないような解釈も・・・。

日本で「風水」が占いのジャンルに含まれるのは、このような歴史があるからでしょうか。

風水家相の概念は、プラスアルファの感覚でポジティブな解釈だけを気軽に取り入れるにとどまった方が、現代の日本の住宅環境に合う心地よさが実現できそうです。

環境心理学

伝統風水師 山道帰一氏は、巒頭である住宅の風水を現代の言葉で「環境心理学」と表現しています。

その理由を、「素晴らしい住宅風水の環境下では、十分に素晴らしい心理反応を引き起こすからです。そういった環境心理学上の素晴らしい場所は、心身の健康に有益であり、人間関係は良好になり、住人に創意を喚起させ、良き縁談はまとまり、財運を招来し、気力は充実し、ビジネスは成功し、人に多くのことを達成させます。逆に悪い風水の場合はどうでしょうか。悪い風水の場とは、人を無気力にさせる気場であり、そのような場所では気分はすぐれず空虚になり、人を意気消沈させます。風水の悪い場所では実に多く憂鬱病の人を見出すことができます。そのような場所では、心身が不健全になり、怪我をしたり病になったりします。人間関係も諍いばかりが起こり、その顛末も険悪で、良い発展がなく常に不利な状態となります。ビジネスは滞り成功し難く、必要以上の挫折を味わうことが往々にしてあるでしょう。災いは度重なるものであり、事故や怪我に遭いやすく、健康不良から病気にかかりやすくなります。」と書いていました。

書籍「環境心理学」

環境が心に与える影響は大きく、特に一日の大半の時間を過ごす家に至っては、風水と家相も環境心理学として設計・コーディネートに使いたいものです。

参考文献
・山道帰一「風水住宅図鑑」2019 太玄社
・宮内貴久「風水と家相の歴史」2009 吉川弘文館
・諏訪春雄「日本の風水」2018 KADOKAWA
・愛新覚羅ゆうはん「いちぼんやさしい風水入門」2020 ナツメ社

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